大正10年に建てられ、現在空き家になっている大須のビル「西大須ビル」(名古屋市中区大須2)が2009年春、リノベーションにより新たに生まれ変わることが明らかになった。プロデュースするのは、名古屋を中心に店舗の設計やデザインをてがける「ROJAK(ロジャック)」(中区松原1)。
同ビルは、公共の建築以外では名古屋・中区最古のビル。「現在の建築物にはない空気感とデザインがある」と話すロジャックの政木さんの言葉通り、「スクラッチタイル」というタイルを外壁に使用したアシンメトリーな外観や、建物の上部にあしらわれた左官仕上げのモニュメントなど、現在の建築物ではあまり見られないような装飾的なデザインが特徴。
戦争中も大地震も耐えてきた同ビルは、4~5年前に一時取り壊しの危機にさらされていた。老朽化に加え、大通りに面した立地条件の良さから、取り壊し後マンションを建てる計画が浮上した。しかし実際に取り壊しを実行しようと詳細調査を進めると、同ビルを壊すことは周辺環境にも関わってしまう条件が判明したため、計画は中止に。そして西大須ビルはその姿を今に残している。
「ずっと空き家になっている西大須ビルの存在を気にかけていた」というロジャックの山本さんらは、「自分たちの手で西大須ビルを復活させ、ひいては西大須地区を元気にしたい」とリノベーション案を構築。今年1月に同ビルの所有者に直接掛け合いに行った。「建物の歴史を大切にし、現状ある古き良き部分をなるべく生かすように心掛ける」という山本さんらの熱意が伝わり、案は快諾。今回の着工に至った。
地下1階~地上3階のフロア構成の同ビルは、耐震補強を行ない、内装を整えると同時に、現在入居者を募集している。1977年から2000年までは同ビルの地下1階にライブハウスがあったほか、レコードショップなどさまざまな店舗が入居していた。そうした特徴を生かし、「地下1階=バーやパブなどの飲食店、1階=レストランやカフェなどの飲食店、2階=飲食店やアパレルショップ、美容サロン、インテリアショップなど、3階=アパレルショップ、雑貨店、事務所などがいいのでは」と政木さんは話す。
今月、「西」と「OSU」を組み合わせた同ビルのロゴマークも発表された。新しく歴史を刻み始めた「西大須ビル」の今後の動向に注目が集まる。