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名古屋市公会堂で映画「許されざる者」舞台あいさつ-渡辺謙さんら登壇

来名した(左から)李相日監督、渡辺謙さん、佐藤浩市さん

来名した(左から)李相日監督、渡辺謙さん、佐藤浩市さん

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 鶴舞の名古屋市公会堂(名古屋市昭和区鶴舞1)で8月23日、映画「許されざる者」の試写会が行われ、李相日監督と出演の渡辺謙さん、佐藤浩市さんが舞台あいさつに登壇した。

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 同作品はクリント・イーストウッド監督主演で1992年に制作され、第65回アカデミー賞最優秀作品賞など4部門を獲得した同名映画の日本版。「フラガール」「悪人」の李さんが監督を務め、渡辺さんが主人公を演じる話題作だ。出演はほかに柄本明さん、柳楽優弥さんら。

 江戸時代から明治時代への転換期。幕末に多くの志士を切り「人斬り十兵衛」と恐れられた釜田十兵衛(渡辺さん)は、幕府軍が敗れた後に蝦夷(えぞ)地へ逃れ落ちる。それから10年余り過ぎた1880年、十兵衛は2人の子どもと貧しく静かな生活を送っていた。そこにかつての仲間の金吾(柄本さん)が現れ、賞金稼ぎの手伝いを持ち掛ける。二度と人は殺さないと亡き妻に約束していた十兵衛だったが、子どもたちが食べるものにも事欠く暮らしを前に、再び刀を手にする。

 ハリウッド映画の名作へのチャレンジに渡辺さんは「映画化の話が来た時は正直、むちゃをすると思った。ただ持ってきたのが李監督だった。彼は情熱が湧き上がるまで時間をかけて誠実に作品と向き合う人。今、彼が伝えたい何かがこの作品だと分かったから、喜んで引き受けた」と話す。

 十兵衛を追い詰める男・大石を演じた佐藤さん。「自分の中で悪役とそうじゃない人間の選別はない。人間を演じる以上、大なり小なり悪い面はある。それが特化して出てきた人間が大石だと思っている。何かの歯車がおかしくなっている部分を大事に演じた」。監督は「時代劇という枠ではくくれない映画。勧善懲悪のヒーローものではなく、今の現実に近い善と悪がはっきり割り切れない世界をリアルに描いている。切なさや痛みが同居する作品になった」と話す。

 30年以上に及ぶ長い俳優歴を持つ2人だが、同作が初共演。「互いに30年以上やっていて、年齢もほぼ同学年。ずっと互いを気にしながら走り続けてきたと思う。遠くにいながらも認め合って過ごしてきた相手。こういう役で向き合えたのは本当に幸せだった」と渡辺さんが共演を喜べば、佐藤さんも「互いがやってきたことも分かっているし、同胞意識があった。眼のふちには必ず、入っていた。この歳になって、こういう映画で李監督のもとで仕事ができた。縁として僕らは恵まれていた」と信頼関係を語った。

 北海道での過酷な長期ロケを行った同作。「リアルな開拓民の生きざまを描くために、監督は人が踏み込んでいない場所を探した。道もないような場所に機材を持ち込んでセットを組んだ。こんなに過酷な場所で彼らは生きようとしていたと、演じる必要もないくらい感じることができる素晴らしい現場だった。俳優にはその現場に耐え得るだけの精神力や肉体も要求された」と渡辺さん。

 ベネチア国際映画祭、トロント国際映画祭など、海外への出品も決定している。監督は「アカデミー賞作品と比べられる怖さはある。でも全く別の新しい日本映画になっている確信がある。日本の風土、歴史を持つ日本映画として海外の人にも受け入れてもらえるはず」と自信を見せる。

 最後に3人は満員の客席に一言ずつ声を掛けた。「正義という言葉が持つ意味は、深く難しいものがある。簡単に使われるが、日常、国と国、いろいろな正義がある。映画を見ながら、自身の生活の中にある正義を考えてほしい」(佐藤さん)。「分かりやすい言葉でくくれる映画ではないが、必ず最後に胸に迫ってくるものがあると信じている。CGなどを一切使っていない風景の迫力、2人の俳優の迫力を見てほしい」(李監督)。「イーストウッド監督の高い山に無謀にも挑戦した。かなり難しいルートをたどってキャスト、スタッフともども9合目まで到達したところ。これから皆さんと最後の山頂まで登っていく時を迎えた。高い山なので空気が薄くて息苦しい時もあるが、必ず何かが突き刺さってくるはず」(渡辺さん)。

 9月13日からミッドランドスクエアシネマほかで全国ロードショー。

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