錦の長者町地区で7月25日、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2016」の作品制作現場が報道陣に公開された。
この日、制作の様子が紹介されたアーティストは佐藤翠さん、ルアンルパの2組。
佐藤さんは愛知県を拠点に活動。クロゼットに収められた服飾品をモチーフに、閉ざされた室内を濃密で幻惑的な空間として演出するアーティスト。
長者町会場の「八木兵錦6号館ビル」と岡崎市も六供会場の「石原邸」に作品を出展。長者町ではクロゼットをモチーフにした絵画と鏡を使ったインスタレーションを展開する。8月10日~23日には名駅の「ジェイアール名古屋タカシマヤ」1階メインステージで、同店で取り扱う靴とコラボレーションした展示も行う。
新作を中心に大小合わせ55点を展示するという佐藤さん。「繊維の問屋街である長者町で、服を描いている自分が展示できることはうれしい。展示室の壁全面に布を張り、布に包まれる空間を作った。昨年から鏡をキャンパスとして使うようになった理由は、展示空間自体も作品になるようにしたいと思い始めたから。鏡は空間や鑑賞者を写し込むし、鏡の奥にも空間が作られる。その機能がやりたいこととマッチした。鏡に当たるライティングも意識して、展示空間を演出する。見る人が中に入り込むような感覚になる展示にしたい」と意気込む。
ルアンルパはインドネシアでアーティストたちが設立した非営利団体。社会学、政治、テクノロジー、メディアなどあらゆる分野の思考や実践を横断しながら、アートの創造性を駆使して文化的課題に応答する活動を展開している。
同団体メンバーは長者町の「堀田商事株式会社」1階に74日間に渡り滞在しながら、「アーバンカルチャー」「新たなスペース」をテーマにした学校「ルアンルパ・スクール」を運営。多様な活動をする人々を公募し、自律的でオルタナティブな学びと共有の場を創出するという。
中心メンバー、サレ・フセインさんは「会期中は入れ替わりながら、延べ10人が長者町に滞在して取り組む。スクールには11人ほどの参加者を募り、それぞれが持っている知識や技術を互いにレクチャーし合う。参加者はアートのプロフェッショナルである必要はない。新しいスペースを作り、活動やリサーチをしながら、結果を発表していく。何かを制作するのではなく、文化的なエージェントを生んでいくことが目的」と話す。
ビルを提供する堀田商事の堀田勝彦さんは「長者町は第1回からトリエンナーレに協力してきたが、最初は海外作家の受け入れを心配する声もあった。回を重ねるごとに、街の活動に参加する人が増え、進歩する姿を目の当たりにして、トリエンナーレを大切にするようになっていった。アーティストの皆さんが全力で活動できる状況を用意して、最高のパフォーマンスを発揮してもらいたい」とエールを送る。