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3年に1度の現代アートの祭典~「あいちトリエンナーレ2013」を体感しよう

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あいちトリエンナーレとは?~現代アートの祝祭空間

 国際芸術展「あいちトリエンナーレ2013」が名古屋市を中心とした愛知県内各地で開催される。トリエンナーレの意味は「3年に1度」。第1回は「都市の祝祭 Arts and Cities」をテーマに2010年に開催され、57万2023人の来場者が最先端の現代アートと街に飛び出した祝祭空間を体験した。
 第2回は8月10日から10月27日の79日間に渡り、34の国と地域から122組のアーティストが参加して行われる。会場は愛知芸術文化センター、名古屋市美術館や長者町、納屋橋などの名古屋市内各地に加え、岡崎市内(東岡崎駅、康生、松本町)でも開催。美術館などでの展示や上演とともに、街の中でも多くの作品に出あうことができる。
 今回のテーマは「揺れる大地-われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」。アートはもちろん建築にも造詣の深い東北大学大学院教授の五十嵐太郎さんを芸術監督に迎え、建築的な視点を取り入れた作品やアーティストも多く選ばれた。東日本大震災を含む世界各地で起きている大きな変動をとらえた国内外のアーティストらによる、先端的な現代美術、ジャンルを越境するパフォーミングアーツ(舞台芸術)が愛知に集結する。
五十嵐芸術監督

見所1 現代美術~大きく変化する社会をとらえた作品群

 現代美術は国内外から76組のアーティストが出品。日本最大級の規模で最先端のアートを紹介する。美術館に加え、名古屋市内、岡崎市内のまちなかが会場。建築の視点の導入により、新しい空間の解釈を提示する作品や、街の日常の風景を一変させる作品なども数多く展示される。
 象徴的なテーマ展開として、多くのアーティストがそれぞれの表現方法で「場所、記憶、復活」に繋がる作品を発表する。ヤノベケンジさんは希望の復活のシンボルともいえる《サン・チャイルド》を展示。美術館の展示室内に華やかな結婚式場を創出し、実際に結婚式を執り行う。(左写真=《サン・チャイルド》2011 courtesy-of-the-artist)
 オノ・ヨーコさんは、祈りを込めたメッセージとして《生きる喜び》を名古屋テレビ塔ほか、街中で展開するとともに、愛知芸術文化センターに光に満ちた空間を生みだす《光の家の部分》など、5作品を出展する。
 宮本佳明さんは東京電力福島第1原発の図面通りに、愛知芸術文化センターの壁や床にテープを張る。原発建屋の断面線を表し、原発の形を浮かび上がらせて大きさを表現する。
《福島第一さかえ原発》2013 &copy宮本佳明
 アルフレッド・ジャーさんは東北の被災地をリサーチ。閉校する学校から黒板を譲り受け、名古屋市美術館でインスタレーションを制作する。また、テーマと関連する映像作品を、実験映画、ビデオアート等のジャンル区分を越えて選出。20組のアーティストを「映像プログラム」として紹介する。
細江英公『へそと原爆』1960
 長者町会場では新進作家を対象にした「企画コンペ」で選ばれた展示も開催。応募総数195件から選ばれた11企画が展示される。2013年のトリエンナーレは、日本が大きな試練を迎え、転換を迫られる中で世界に発信する国際展となった。先端的なアートを紹介する第1回の長所を継承・発展しつつ、荒波を越えていくための新機軸や時代性が作品に織り込まれている。

見所2 パフォーミングアーツ~ジャンルの垣根を超える舞台

 パフォーミングアーツは国内外から15組が参加。最先端のダンス、演劇、音楽が愛知芸術文化センターを中心に、まちなかでも上演される。完全新作が7本、日本初演作品が4本、予定されている。ダンス、演劇、造形美術、建築等のジャンルの垣根を越え、舞台芸術と視覚造形美術を架橋する作品が並ぶ。
 今回は「われわれが立っている場所を見つめ直す」をコンセプトに、不条理演劇を代表する劇作家・サミュエル・ベケットの作品や世界観を取り上げている。ARICA(アリカ)はベケットの代表作「しあわせな日々」を新訳、新たな舞台装置で上演する。
ARICA+金氏徹平「恋は闇/LOVE IS BLIND」2012年 photo 宮内勝
 やなぎみわさんは、名古屋でプロジェクトへの参加者を公募。トリエンナーレの「案内嬢」としてガイドツアー形式のパフォーマンスを披露する。また、ベケットの戯曲「クラップの最後のテープ」から想を得た新作「ゼロ・アワー 東京ローズ最後のテープ」を上演する。
やなぎみわ photo/木村三晴
 福島県の「今と未来」の姿を世界に発信する「プロジェクトFUKUSHIMA!」は、オアシス21で「フェスティバルFUKUSHIMA! in AICHI」を開催。福島で行われる盆踊りや参加型ライブで、人々が交流し、未来について考える場を創造する。
 本芸術祭の特徴の一つであるオペラの上演は今回も行われる。愛知芸術文化センターでイタリア人指揮者カルロ・モンタナ―ロさんと新進気鋭の演出家・田尾下哲さんによる「蝶々夫人」を上演。日本の旋律が織り込まれた美しい音楽と斬新な舞台空間が展開される。(左写真=田尾下哲 photo/平岩亨)

注目企画1 キッズトリエンナーレ、パブリックプログラム~より深くアートに触れる

 前回、多くの子どもたちが楽しんだ「キッズトリエンナーレ」は今回も継続。自由に創作やアートを体感できる場を提供する。今回は参加アーティストによるプログラムや公募企画など20種類以上の多彩なワークショップを開催する。
 一般を対象にしたプログラムでは、トリエンナーレを身近に感じてもらうためのアーティストトークやディスカッションなどが実施される。本芸術祭のテーマについて観客やアーティスト、キュレイターがともに考え、読み解く場を設定し、現代社会とアートの関係を考えていく。

注目企画2 建築関連プロジェクト~街の魅力を再発見

 今回のトリエンナーレでは、建築の視点から街の魅力を再発見するプロジェクトも行われる。県内各地の建築物を解説し、街自体をミュージアムとして楽しむためのガイドブック「あいち建築ガイド」が発売中。普段一般公開されていない建築物をガイドツアー形式で紹介する「オープンアーキテクチャー」を実施。愛知県指定文化財の四間道・伊藤家住宅や大地に転がるドラム缶のようなデザインのコルゲートハウス(豊橋市)など、約20の建物が公開される。コルゲートハウス

アートを楽しみ、考えよう!

 前回、名古屋市内の主要会場を繋ぎ、観客の足となった「ベロタクシー」は今回も運行。トリエンナーレのチケットを提示することで、無料で乗車できる。岡崎市内の康生会場~松本会場間でも運行する。
 また、会期中、豊橋市、知多市、春日井市、東栄町の県内4ヵ所で参加アーティストの作品25点程度を巡回展示する「モバイル・トリエンナーレ」を開催。作品展示に併せ、ワークショップも行う。
 アートを楽しむ、アートを通じて社会を考える、街の魅力を再発見する。楽しむポイントはいろいろ。一番気になる所から足を運べば間違いはないはずだ。祝祭空間を楽しむ、美しさに息を飲む、そして思い出し、考える。作品に触れるたびに、様々な感情がわき上がるはず。この夏は「あいちトリエンナーレ2013」を体感しよう。
記事:竹本真哉

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