名古屋市出身のダンサー・平山素子さんが7月22日・23日、愛知県芸術劇場(名古屋市東区東桜1)小ホールでダンス公演「After the lunar eclipse/月食のあと(リ・クリエイション)」を行う。
2008年に名古屋市芸術奨励賞、2009年には芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞したダンサーで振付師としても活動している平山さんは、2002年から筑波大学で教鞭(きょうべん)をとり、舞踊を学術的側面から紹介し、後進の育成にも力を注いでいる。
同作は2009年に初演を行った平山さん初の単独ソロプロジェクト。LEDの光を用いて月や宇宙をモチーフに作品を発表してきた筑波大学人間総合科学科教授でライトアーティストの逢坂卓郎さんとのコラボレーション作品。平山さんは大量のLED電球が付いた衣装を身にまとい、自然現象から影響を受けて変化していく身体をテーマにダンスを踊る。身に着けるLEDの数は約200個、インスタレーションで使う数は1万5000個になるという。衣装は愛知県出身のデザイナー・スズキタカユキさんが手掛ける。
1年半をおいての再演となる今回。「初演は夢中になってやった。再演できることはうれしい。テーマは過去から現代、未来まで続く時間の経過、重力、そして光と闇の三つ。コンセプトは初演とほぼ同じで、肉料理を魚料理に変えるような変更はしていない。ただ衣装、音楽、ダンス、全てで細かなところを徹底的に見直し、繊細さと密度を上げた」と平山さん。
光がもたらす安心感と闇がもたらす不安感。コンセプトは変わらないが、2009年の初演時と今回の間には、東日本大震災という大きな出来事が存在する。平山さんは「震災があったからコンセプトを変えてしまおうとは考えなかった。ほのかに明かりがともる瞬間、そして光が広がっていく感覚を大切に表現したい」と話す。多彩な光の表現とともに、完全な闇を長時間作り出すこともこの舞台の特徴。東京公演では真っ暗になった劇場で観客の不安感が伝わってきたという。「闇を照らす光の大切さ、光が人にもたらす温かさなどをあらためて考える機会になれば」とも。
震災直後、各地で公演が中止になり、多くの劇場関係者や表現者も苦境に立たされたという。「今回の東京公演も、やれますかと何度も聞かれた。劇場が元気であることはすごく大事なこと。アーティストには劇場からアートを発信し続ける義務がある」と、表現を続けることの大切さと覚悟を語る。
7月20日には、愛知県芸術劇場コンサートホールで、東日本大震災復興支援チャリティーコンサート「オルガンとダンスの華麗な競演~愛知出身アーティストによる復興への祈り~」も開催する。共演は国内外で活躍するオルガニスト・吉田文さん。
「ダンスとコラボレーションをするのは初めての経験。パイプオルガンはホール全てが一つの楽器となって音楽を生み出す。音楽を通して祈りの心が広がればいいと思っている」と吉田さん。平山さんは「パイプオルガンの振動に身体を預けたい。今、多くのアーティストが何かできないかと考えている。たくさんの人が劇場に集い、復興を祈ってほしい」と多くの来場を呼び掛ける。
「月食~」の開演時間は、22日=19時・23日=14時・18時(開場は開演の30分前)。料金は、一般=2,700円(当日3,000円)、学生=1,500円。4歳未満は入場不可。