大須のフォト&アートギャラリー「プシュケ」(名古屋市中区大須2、TEL 052-253-5919)で9月13日から、同ギャラリーオーナーでカメラマンの安野亨(あんの とおる)さんの写真展「優しい時間~Klotho~」が開催される。
タイトルの「Klotho(クロトー)」とは、ギリシャ神話に出てくる運命をつかさどる3人の女神の中の一人で、運命を「紡ぐ」存在。「ギリシャ神話では、神様が怒ったりいじけたり、嫉妬するなど人間らしさがあって好きなので、ギャラリー名やタイトルに使っている」と安野さん。
作品はすべて新作で、2年前の個展以降に撮りためたもの。黒を背景にした女性のヌードで、2人のモデルと年間6~7回の撮影を行った。作品の総数は40点以上。約半数は展示、残りは手に取って見ることができる。「今回は特にフォルムを意識している。ハスの花や金魚を作品に取り入れたのは、柔らかいラインや動きの中のラインが女性と似ているから。ギャラリーの2階では泳ぐ金魚を映像で流す」
撮影技法は長い時間シャッターを開いて撮影する「長時間露光」。薄暗いスタジオの中で、モデルにイメージを伝えて、細かい指示はしないという。撮影中は「自分がそこにいる」という時間と「連続性」を大切にして、始めのうちはモデルと会話したり、モデルが動いたりすることもある。「撮影前夜は緊張するが、その緊張感が好き」と目を細める。
「撮影中は15分くらいファインダーをのぞきっぱなしで、だんだん無心・無言の状態になる。誰にも邪魔されたくない。集中している時は音も聞こえない。視界も狭くて、体の動きや呼吸もいつもと違うかもしれない。腰の痛みを忘れるくらい。それくらい没頭して、沈み込んでいるような感覚。休憩になると現実に戻る。腰も、あいたたたってなる」と笑う。安野さんにとっては「外界からの影響が少なくて、その時間のことを後から思うと優しいと感じる。そこにいることに意識があると優しくないのかもしれない。撮影している時間は優しい時間」とも。
「見に来てくれた人にとって、その時間が優しい時間であればいいなと思う。世の中の雑多を忘れられる時間であれば」と来場を呼び掛ける。
開廊時間は12時~20時(日曜・祝日は19時まで)。9月16~19日は休廊。23日まで。