映画「きばいやんせ!私」の舞台あいさつが3月17日、栄の映画館「センチュリーシネマ」(名古屋市中区栄3)で行われ、武正晴監督、出演の坂田聡さんらが登壇した。
同映画は「百円の恋」「嘘八百」を世に送り出した武監督と脚本家の足立紳さんがタッグを組んだコメディードラマ。不倫騒動などで人生に疲れ切った女性アナウンサーが、幼少時に過ごした鹿児島県南大隅町の御崎祭を取材することで元気を取り戻し、復活していく姿を描く。伝統を失っていた祭りを完全復活させようと奮闘する主人公・貴子を夏帆さん、町に根を下ろして農業で生きる元同級生・太郎を太賀さんが演じる。出演はほかに、岡山天音さん、坂田さん、眼鏡太郎さん、伊吹吾郎さんら。
上映終了後に武監督と坂田さんが登壇すると客席から大きな拍手が起こった。役場の職員・田村役を演じた坂田さんは「日本男児として恥ずかしいが、生まれてから一度も神輿(みこし)を担いだことがなかった。実際に担ぐと、とても滑るし、本当に肩が痛かった。坂道は大変だし、1300年ずっとやっていたと思うとすごいことだと思った」と振り返る。知多市出身の武監督は「知多にもいろいろな祭りはあるはずだが、共同体が苦手な人間なので、ほとんど参加したことがなかった。今回の映画のおかげで、祭りに触れることができた」と話す。
武監督は「本物の祭りの日とは別に、撮影のためにもう1回同じものをやってもらった。撮影をしているというより、御崎祭をもう1回やり、その中に俳優やスタッフが交じっただけで、皆がカメラを忘れていた。映画では実際の祭りの映像と映画のために撮った映像が両方とも見られる」と語る。
2人が役場の野田役を演じた眼さんについて「神輿を担ぐ時に楽な場所に入っていた」と話し始めると、トランペットの音色。眼さんが劇中同様にトランペットを吹きながら、サプライズで登壇した。眼さんは「トランペットを特技に書いたら監督にお願いされた。実は芝居のために練習しただけで1曲しか演奏できない」と明かし、「今日は袖から舞台までが思ったより遠く、息が切れてしまった」と笑う。
武監督は「担ぎ手がいない祭りの現状などを知り、映画にできるのか悩んだが、そのままシナリオにしようと考えた。町の人たちは怒るどころか、全てにOKを出して力を貸してくれた。皆さんの協力が本当にうれしかった」と話し、坂田さんと眼さんは「またいつか南大隅町に行きたい」と声をそろえた。
最後に3人は「皆さんの口コミが頼り。映画が良かったと思った人は拡散していただけたら」(坂田さん)、「この映画でしか見ることができない、いろいろなものが詰まっている。替えの利かない映画なので、どうか見ていただけたら」(眼さん)、「タイトル含め鹿児島の映画に見えるが、仕事を始めた若者、働き盛りの大人たち、働く全ての世代に見ていただきたい。自分にとって仕事とは何だろうと考えてもらえる映画。日本の端に千年続く祭りが残っているのは奇跡のようなことで、それを未来へ続けていく人たちがいることを知ってほしい」と呼び掛ける。
舞台あいさつ後、記者会見を開いた武監督は「どこの町も若者が少なくなり、祭りの伝統を維持する、続けていくのは大変。この映画を見た若者が、祭りの時くらいは故郷に帰ろうかなと思ってもらえたらうれしい」と話した。
センチュリーシネマほかで公開中。