「あいち国際女性映画祭2018」が9月5日、名古屋のウィルあいち(名古屋市東区上竪杉町1)ほかで始まった。
世界各国・地域の女性監督の作品、女性に注目した作品を中心にさまざまな映画を上映することで、映像文化を通じて女性の社会進出の支援と国際交流を図る同映画祭。1996年に同館の開館とともに第1回が開かれ、今年で23回目を迎えた。昨年に続きサテライト会場となる名駅の映画館「ミッドランドスクエアシネマ」(中村区名駅4)でも作品を上映。半田市「アイプラザ半田」、弥富市「弥富市総合社会教育センター」など2市でも上映、ゲストトークが行われる。
今回は、日本初公開3本、愛知初公開13本を含む国内外の長編映画を21本、短編映画を11本上映。11作品の上映で監督をゲストに招き、トークイベントや舞台あいさつを行う。「天国と地獄」「妻よ薔薇(ばら)のように 家族はつらいよIII」など特別企画の上映・トークイベントには、俳優の仲代達矢さん、橋爪功さん、はるな愛さんらが出演する。
名古屋難民支援室との共同企画では、ミャンマー難民を父に持ち、日本で生まれ育った少女が2つの祖国の間で揺れ動く青春映画「マイ・カントリー・マイ・ホーム」(チー・ピュー・シン監督)を上映。パネリストに日本で初めてネパール人難民として認定され、現在は豊川市に住むケーシー・ディパックさんを招き、シンポジウム「日本に暮らす難民を知ろう!支えよう!」を行う。
開催前日の4日には、中国のポン・シャオレン監督、池田千尋監督をゲストに招き、ウィルあいちで合同記者会見を開いた。映画祭ディレクターの木全純治さんは「映画界に女性スタッフは増えているが、女性監督に対する投資はなかなか増えていない。そんな中で、今回はドキュメンタリー作品が多く選ばれた。天白区や岐阜県関市など、地元を舞台にした作品が3本あるのも今回の特徴。黒澤明監督の助手を務め、日本映画の黄金時代を知る野上照代さんが聞き手となる、仲代さんや橋爪さんのトークイベントも注目してほしい」と話す。
ポン・シャオレン監督は中国湖南省出身。北京電影学院を卒業後、上海フィルムスタジオの監督に就任し、ニューヨーク大学映画研究所で映画芸術修士号を取得。ハリウッド的な大作映画が増えている中国映画界で、女性の目線で社会の現状を描く作品が高い評価を受けている。愛知初公開の上映作品「リメンバー・ミー」は、映画スターになることを夢見て小さな村から上海にやってきた女性と、撮影監督を目指す幼なじみの男性の恋愛を描くドラマ。
同監督は「中国映画界はまだまだ男性中心の世界で、女性監督が映画を作ることはいつも困難を伴う。女性の映画関係者が集まり、協力し、励まし合えるこの映画祭は、私にとって大きな価値がある。もちろん映画の価値は性別で分けるものではなく、優れた作品かどうかで評価されなければならない。皆さんに私たちの映画を好きになり、楽しんでほしい」と話す。
池田監督は北海道出身。静岡県の高校在学時から自主制作を始め、早稲田大学卒業後に、映画美学校、東京藝術大学大学院などで映画を学び、作品制作の現場に参加。「東南角部屋二階の女」「先輩の彼女」「東京の日」などの劇場公開映画や、テレビドラマの監督として活躍している。愛知県初公開の上映作品「Magic Town」は、池田監督が故郷の静岡県袋井市を舞台に制作したドキュメンタリー。映画制作ワークショップに集まった小中学生と大人のスタッフたちが、ぶつかり合いながら共に奮闘する姿をフィルムに収めている。
池田監督は「子どもたちと映画を作るワークショップは2011年から続けている。私が高校生の頃は町に映画館がなく、映画文化が無い中で育った。私は手さぐりで映画の道に進んだが、今の子どもたちには映画を持っていけるかもしれないと希望を持って始めたもの。自分の意思で映画を作りたいと思えば、作れることを伝えている。このドキュメンタリーで見せたかったのは、子どもたちが持っている可能性。子どもたちが生み出す奇跡のような時間が映画の中に刻み込まれている。映画を体験し、目撃してほしい」と呼び掛ける
今月9日まで。問い合わせ先は、あいち国際女性映画祭事務局(TEL 052-962-2520)。