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名古屋の出版社「風媒社」が創業者・稲垣喜代志さん遺稿集を刊行

風媒社の創設者・稲垣喜代志さんの遺稿集「その時より、野とともにあり」

風媒社の創設者・稲垣喜代志さんの遺稿集「その時より、野とともにあり」

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 名古屋の出版社「風媒社」(名古屋市中区大須1)が10月28日、創業者・稲垣喜代志さんの遺稿集「その時より、野とともにあり」を出版した。

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 稲垣さんは刈谷市出身。学生社、日本読書新聞などに勤務した後、1963(昭和38)年に風媒社を設立。東海地方の出版の開拓者として、昨年10月28日に84歳で亡くなるまで、多くの書籍を世に送り出した。

 同書は稲垣さんが新聞、雑誌などに連載、寄稿した文章を集めたもの。出版へかける思いや、多くの文化人との交遊、在野からの鋭い社会批評などが、全六章構成でまとめられている。文章の分類と章タイトルは稲垣さんの生前の意向に基づいて編集された。亡くなる直前まで約7年半にわたり雑誌連載した愛知の陶芸家・加藤唐九郎の評伝「怪人・唐九郎伝説」も全編収録している。

 同社編集長の劉永昇さんは「もともとは会社の50周年記念出版として企画していたので、生前から本人が文章に手を入れてテーマ別に整理していた。遺稿集はどうまとめるか、文章を直すかどうかなどの匙(さじ)加減が難しいが、その部分は心配せずに編集できた。遺品から出てきたものも含めて多くの文章があったが、没後1年のタイミングで出版することができたのは幸い」と出版の経緯を話す。

 稲垣さんについて「いろいろな時期の文章を読んだが、考え方も文章の中身もまったくぶれない人。80歳を超えた時の文でも若々しく、真っすぐに伝わってくる。日本社会に対する鋭い意見は、現代の諸問題についても当てはまるように思える」と話す。「野にあって人知れず生きている人々の生きざまを皆に手渡していきたいと、出版に取り組んできた。虐げられている人、弱い人の側に立つという姿勢は、社員全員が共鳴しているところ。その思いを皆で受け継いでいきたい」とも。

 劉さんは「熱くて厳しい言葉の数々を読んで、稲垣さんが大切にしていた『心から心へ』という出版にかけた思いを感じていただけたら」と呼び掛ける。

 仕様は四六判、283ページ。価格は2,160円。

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