名古屋テレビ塔の歴史をまとめた書籍「名古屋テレビ塔クロニクル」が12月5日、人間社(名古屋市千種区今池1)から発売された。
名古屋テレビ塔が1954(昭和29)年に日本初の集約電波鉄塔、観光タワーとして開業してからの64年の歴史をまとめた同書。厳選した約430枚の写真や多彩な視点からの解説、新たに発見された設計者・内藤多仲による手書きの設計図ほか貴重な資料、スタジオジブリプロデューサー鈴木敏夫さん、映画監督・堤幸彦さんら名古屋ゆかりの著名人のインタビュー、エッセーなどを掲載している。巻末付録には建築設計のプロがデザインした組み立て模型「名古屋テレビ塔ペーパークラフト」も。
制作した樹林舎の山田恭幹社長は「本書の魅力の一つは、建築的な部分の詳細な解説。愛知の古い建物の保存・活用に関わっている建築史家の村瀬良太さんら多くの専門家の協力で、分かりやすく歴史や文化的価値を伝えている。名古屋のシンボルとしてのテレビ塔についても、多くの関係者や市民から話を聞き、記憶の中にある思いを丁寧に拾い上げた」と話す。
編集を担当したフリー記者・編集者の長坂英生さんは「多くの人の力を結集して完成した本。誕生の歴史、訪れた著名人やさまざまな時代の様子、今は手に入らないグッズの紹介などのほか、現在のテレビ塔についても書いている。編集をして、テレビ塔には膨大な資料があることに驚かされた。それは歴史があること、街のシンボルであることの証し」と振り返る。
同施設で行われた出版記念パーティーで名古屋テレビ塔・大沢和宏社長は、「平成26年に60周年を迎えた際、テレビ塔のシンボル化プロジェクトをスタートし、『シンボルとは何か』を考えてきた。4年越しで取り組み、原点から調査をしたこの本が完成し、その問いを検証することができた。いかに人々の心の中に感動、思い出を残してきたか、これから残し続けられるかが大切」と話す。
同テレビ塔は、来年1月6日まで営業後、7日から工事が始まり、1年半休業。2020年7月にリニューアルオープンする。大沢社長は「大きな転換点を迎えるこの時期に総括する書籍を出版できた。リニューアル後は新しいシンボルとして皆さまに活用していただき、新たな感動や思い出をつくってもらいたい。施設は経年劣化するが、文化財は経年優化して価値が上がっていく。再生事業を成し遂げ、皆さんに喜ばれるタワーにしたい」と意気込む。
仕様はB5判、256ページ。価格は2,160円。