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「あいちトリエンナーレ」でベケットの名作、新訳で上演-アート作品が舞台を彩る

愛知芸術文化センターで上演された舞台「しあわせな日々」/ARICA+金氏徹平「しあわせな日々」原作 サミュエル・ベケット © あいちトリエンナーレ2013 photo Naoshi Hatori

愛知芸術文化センターで上演された舞台「しあわせな日々」/ARICA+金氏徹平「しあわせな日々」原作 サミュエル・ベケット © あいちトリエンナーレ2013 photo Naoshi Hatori

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 愛知芸術文化センター(名古屋市東区東桜1)で10月12日~14日、演劇ユニット「ARICA」によりサミュエル・ベケットの名作「しあわせな日々」が新訳台本で上演された。

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 同公演は愛知県内で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2013」のパフォーミングアーツ(舞台芸術)公演の一つ。同芸術祭では最先端の現代アートの展示とともにパフォーミングアーツの上演を大きな柱としている。舞台芸術と視覚造形美術を結ぶ作品、同芸術祭のテーマである「揺れる大地-われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」に沿った作品などをラインアップ。開幕初日以来、ダンス、演劇、造形美術、建築などのジャンルの垣根を越えた作品が発表されている。

 ARICAは2001年に演出家の藤田康城さん、詩人・批評家の倉石信乃さん、女優の安藤朋子さんらにより設立。ビジュアルアートや建築などと呼応するパフォーマンスを上演している。
「しあわせな日々」は不条理演劇を代表する劇作家・ベケットの作品。人間の生と死に思いを凝らすベケットが1961年に書いた代表作を、倉石さんが新訳。新しい解釈で「われわれが立っている場所を見つめ直す」ことを目指した。
また、アーティストの金氏徹平さんが舞台装置を担当。ステージの中央に積み上げられた異形のがれきの中で、2013年のベケットが上演された。

 藤田さんは「初演当時は戦後ということもあって、焦土やがれきだった。現代だったらごみ屋敷に埋まっている女性の方が孤独なリアリティーがある。トラディショナルな日本的ベケットになった。世界中でひどいことが起きているが、それでも人は生きていかなければいけない。最悪でも最善でも、個人個人がそれをどう引き受けていくのか、どう世界と対峙(たいじ)していくのか。かすかな希望を持ち続けなくてはいけない」と演出に込めた思いを語った。

 主演の安藤さんは「ベケットは悲劇と喜劇を混在させるものが多いが、この作品もまさにそう。倉石さんの新訳は、自分自身との距離感がしっかりしている。人は悲しいとき、何も持たないときに、歌うことで自分を励ますのではないかと感じている」と話した。

 金氏さんは「舞台美術の制作は2回目。今回はベケットを意識しつつ、いつも自分がしていることにもつながっている。単純なごみの山ではなく、積み上げているのか、崩れているのか、わからないような中間。京都で集めたものを素材に、2トントラックで持ち込んで現場で組み立てた」とコラボレーションの面白さを語った。

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