見る・遊ぶ

伏見ミリオン座でドキュメント映画「幸せな時間」-老夫婦と家族の姿を記録

記者会見で質問に答える横山善太監督

記者会見で質問に答える横山善太監督

  • 0

  •  

 伏見の映画館「伏見ミリオン座」(名古屋市中区栄1、TEL 052-212-2437)で4月14日、老夫婦とその家族の姿を記録したドキュメント映画「幸せな時間」が公開される。横山善太監督は西尾市出身で、現在は知立市に在住。名古屋限定プログラムとして、横山監督が制作した「ショートストーリーなごや」第1回映像化作品「カヲリの椅子」も同時上映する。

[広告]

 「幸せな時間」は孫娘が祖父母の日々を5年間にわたって撮影し続けたドキュメント映画。結婚して50年になるおじいちゃんとおばあちゃんは庭いじりや家事をしたり、一緒にお茶を飲んで話したり、幸せな毎日を過ごしている。しかし、おばあちゃんが認知症と診断され、おじいちゃんにはがんが見つかる。孫娘は失われていく大切な2人の時間を映像に残していく。

 2人を撮影した孫娘のカメラマン武井彩乃さんは横山監督の妻。大学の映画学科に在籍していたときから、練習として日常的に家族にカメラを向けていたという。横山監督は「妻から作品にしてほしいと映像素材を一気に渡された。2005年から2009年の5年間で撮った映像は40~50時間くらいの膨大なものだった。映画冒頭の幸せそうな日常は2005年の映像で、まだホームビデオとして撮っている。妻が作品にしようと思い始めたのは、おばあちゃんの認知症が分かったころで、そこから映像に熱が入り始めていた。つらい場面が多くて自分では冷静に編集できないから、僕に映像を託したと思う」と話す。

 編集作業は約1年半かかった。「普段通り編集に臨んだが、身内が撮った結婚式のビデオのようにならないか心配で、悩みながらの作業だった。家族の内輪話になっている部分は極力カットして、第三者にも伝わるよう考えながら映像を並べ替えて編集した」と横山さん。編集中も武井さんとの意見交換は頻繁に行った。しかし監督自身が一番印象に残っているのは、最初に膨大な映像と一緒に渡されたメモにあった“戻れない”という言葉。「なんてことないと思っていた映像が、おじいちゃんがいなくなってから見ると、二度と戻らない時間だと気付く。その“戻れない”という感覚を大切に作品にしました」

 タイトルの“幸せ”に込めた思いは一つではない。「祖父母は晩年、幸せな時間を過ごせたと思う。がんや認知症の後でも、照れ隠しや取り繕うことが無くなって、愛情がストレートに出るようになった部分も。そして周りに見守られていくことができた幸せもある。撮影して2人の姿を残すことができた妻も、編集できた僕も含めて幸せだったと思う」

 同時上映の「カヲリの椅子」は円頓寺商店街(西区那古野)が舞台。「ショートストーリーなごや」の入賞作を短編映画化した作品で、認知症のおばあちゃんが新たな人生を歩み始める物語。

 「グループホームを取材して撮影した。認知症でかわいくなったおばあちゃんを描いた少しファンタジックな作品。フィクションとして元気が出る映画にしたかったので気に入っている作品だが、取材した現実を伝えずに申し訳ない思いもあった。この経験も今回の作品のきっかけになっているのかも」と話す。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース