CBCテレビ（名古屋市中区新栄1）が製作した番組「伊勢湾台風60年 色と記憶」が「第61回科学技術映像祭」で「文部科学大臣賞」を受賞した。

　1959（昭和34）年に東海地方を直撃し、死者5098人、負傷者約3万9000人という甚大な被害をもたらした「伊勢湾台風」の記録、記憶を残すことをテーマにした同番組。

　CBCテレビは取材の過程で、港の貯木場から流れ出した大量の材木で多くの人々の命が奪われた名古屋市南部の被害の様子を写した51枚のカラー写真を発見。筑波大学の人工知能科学センターと共同で、当時撮影されたモノクロ映像を最新のAI技術でカラー化する取り組みに挑戦した。見つかったカラー写真をAIに学習させることで、当時の映像に鮮明な色を取り戻すことに成功。伊勢湾台風を体験した人、初めて見る人が共に息を飲む臨場感のある映像をよみがえらせた。

　番組を製作した報道部・有本整ディレクターは「伊勢湾台風は、大きな被害を東海地方にもたらし、災害対策基本法の制定や全国の堤防を整備する契機となるなど、『日本の防災の出発点』になった。しかし60年が経過して体験者は減り、当時の記憶も薄れつつあるのが現状。白黒のフィルム映像を最先端のAI技術によってカラー化することで、体験者には今一度記憶を呼び覚ましてもらい、若い世代には『本当にあった現実』として実感してもらうことで、防災の重要性を考えてほしかった」と制作意図を話す。

　表彰式は東京・科学技術館で4月17日に開催。入選作品は科学技術館のほか全国各地の科学館で上映される（名古屋での上映日時は調整中）。